ドッグトレーナーが、犬を飼うということ、どんな風に犬と関わっていくべきかなど、犬を家族として迎えることがどんなことなのか、分かりやすく紹介します。
ただ可愛いからというだけでは飼っていけない、1つの命だということを忘れてはいけません。
ドッグトレーナーになろうと思ったきっかけ
元々、専門学校を出て専門職に就いていたのですが、あることをきっかけでドッグトレーナーを目指します。
愛犬のチワワが全くいうことを聞かず、ちゃんとしつけをしたくても、夜勤のある仕事をしていたので、中々思うようにいっていませんでした。
布団に何度も粗相をし、スマホの充電器も何個買い換えたか分かりません。
そんな時、ネットで知ったドッグスクールに藁をもつかむ思いで訪れ、犬への正しい接し方や暮らし方を自分も愛犬と共に学び、今ではとても利口な犬に大変身しました。
自分自身の経験を通して、犬を飼っている人に正しい接し方や暮らし方を知ってもらうことで、幸せなわんちゃんやご家族が増えるのではないかと思い、それまでの仕事を辞め、日本社会福祉愛犬協会訓練士の資格を取得。
ドッグスクールを経営していたご主人と結婚し、2人で一緒にドッグスクールを営むようになりました。
ドックトレーナーから見る犬を飼うということ
これから犬を飼いたいという人、すでに愛犬との生活をスタートさせている人、様々な人がいることでしょう。
誰もが知っているように、犬を飼うということは簡単なことではありません。
犬を迎えるということは、自分の時間が犬のお世話をする分、なくなるということです。
愛犬のお世話をする時間が楽しいと思えなければ、犬を飼うこと自体が嫌になったり、飼い始めたことを後悔することになります。
そうならないためにも、犬を迎える前に、どんな生活になるのかしっかりとシュミレーションしておきましょう。
犬は人間頼り
飼い犬は人間の手を借りなければ生きていくことはできません。
散歩やトイレやサークル、クレートの掃除、毎日のブラッシングや定期的なシャンプー、ご飯、しつけなど、数多くのお世話が必要です。
購入前のペットショップでは、チワワなどの小型犬は散歩不要と説明するところもありますが、体の小さな犬種でもお散歩は必須です。
散歩で運動することだけが目的ではなく、外の空気を吸い、色々な音を聞くことでストレス発散にもなりますので、小型犬でも短い時間でかまいませんので、散歩をさせてあげましょう。
また、数多く販売されている種類の中から、飼い犬の犬種に合ったドッグフードを選ぶことも大切です。
中には手作りフードで。というご家庭もあるかと思いますが、犬に食べさせてはいけない食べ物もあるので注意が必要です。
ドッグトレーナーが必要と考える費用
犬に限らず、生き物を飼育するということはお金がかかります。
特に飼い始める時には、必要なものを買い揃えなければいけませんのである程度の費用がかかります。
初期費用として、サークルやトイレ、ドッグフードなどの生活用具の購入費がかかります。
初期購入費用の目安
- 小型犬:40,000円
- 中型犬:45,000円
- 大型犬:70,000円
これがおおよその初期費用の目安です。
大型犬は使用するもののサイズや量が大きいので費用も高額になります。
この他、保健所への登録費用がサイズに関係なく、1頭につき3,000円かかります。
混合ワクチンは、初回接種は2回行います。
この混合ワクチンが終わらなければお散歩デビューできません。
混合ワクチンの種類や病院によって料金が異なりますが、2回で16,000円前後となります。
定期的にかかる費用
毎年かかる費用として、狂犬病予防注射、フィラリア予防薬、ノミ・ダニの予防薬、混合ワクチン、健康診断料金となります。
狂犬病予防注射以外の料金は病院によって異なりますので、良い病院選びをすることも大切です。
定期的にかかる費用としては、ペットシーツ、ドッグフード、シャンプーやトリミング料金です。
臨時でかかる費用
犬が病気や怪我をしたときの治療費、ペット保険料金、ペットホテル代、おもちゃなどの費用がかかります。
15年で生涯費用を計算すると、
- 小型犬:518万円
- 中型犬:652万円
- 大型犬:785万円
これだけかかると言われています。
これ以外にも、寒さに弱い犬の場合、洋服を着せてあげることも必要ですし、暑さ寒さ対策で冷暖房費もかかります。
人も犬も快適に過ごすには、飼うためにどのような準備をしたのかが重要になります。
犬を飼う前に必要なこと
犬を飼う前に絶対に必要なのは、持ち家やペット可マンションやアパートであることは大前提なのですが、家族全員が犬を飼うことに同意しているということが重要です。
1人でも反対している人がいる場合、家族間でトラブルが発生することがあります。
必ず全員が納得してから迎え入れるようにしましょう。
また、流行の犬種を選ぶのではなく、自分たちの生活スタイルに合った犬種を選ぶことも重要です。
かなりの運動量が必要な犬種なのに、生活空間で自由にさせるスペースが狭かったり、散歩に行く時間を中々とれないようではいけません。
どこから迎えるか~ドッグトレーナーの見解
可愛いからとペットショップで衝動買い!などもってのほかです。
保護団体やペットショップ、ブリーダーなど、どこから犬を迎えるのか、どうしてそこから迎えるのかをしっかりと考えなければいけません。
保護犬の場合、持病を持っている子もいるので、他のルートから迎えた場合に比べ、医療費が多くかかる場合があります。
本当にその子と暮らしたいと心から思えなければ、難しいこともあります。
ドッグトレーナーから見るペットショップ
ペットショップから子犬を迎えるのがいけないことだと考える世の中の風潮がありますが、ドッグトレーナーの立場から見て、特にいけない事とは思いません。
大切なのは「どこから迎えたか」ではなく、「迎えたあと、どう育てるか」で、犬の幸せは決まると考えています。
ただし、ペットショップやブリーダーから迎える場合には、そこが正しいことをしている所なのか、自分の目で見て判断してください。
可愛いという思いだけで衝動買いしてしまったり、店員に言われるまま購入してしまうと、悪徳業者の片棒を担いでしまうことにつながりかねませんので、注意が必要です。
ペットショップ・ブリーダーから犬を迎える場合のチェック点
犬を迎える場合、犬だけを見たり、ペットショップ店員やブリーダーだけを見て決めず、チェックポイントをおさえておきましょう。
1ショップ・ブリーダー室の環境を見る
外観がきれいなのは当然として、糞尿のにおいが強い場所は要注意です。
犬が排泄をするたびに汚した場所やトイレを清潔にさえしていれば、そのような臭いは発生しないはずです。
ペットホテルなどで利用しているバックヤードを見学できるかどうか、確認してみましょう。
もし見学できた場合、排泄物がきれいにされていないところは、愛犬をホテルに預けた時、粗末な扱いをされかねないのでお勧めしません。
2子犬の母犬を見せてもらう
どんな母犬が子犬を育てたのか必ず自分自身の目で確かめましょう。
躾がされていない母犬が子犬を育てた場合、母犬から受けるべき正しい躾をされたとは考えにくいです。
ショップで生まれた子犬ではない場合、店員が母犬の情報を答えられるかどうかチェックしましょう。
ペットショップのポップには子犬の生年月日の他、「チャンピオン直子」「良血統」と記載されていますが、ほとんどの場合は「見た目が良い」という意味です。
親や直系の血統がチャンピオンだからと言って、性格や頭が良いということではありませんので注意が必要です。
3母犬の状態を確認する
母犬がきれいにしてもらっているか、悪臭がしていないかなども重要なチェックポイントです。
母犬に清潔感が感じられない場合、子犬も同様の環境で飼育されているので、感染症、皮膚病などに罹患するリスクも高いです。
現に、母犬も子犬も確認せず、インターネットで画像を見て飛行機で子犬を送ってもらい、迎えてみたら2週間毎日洗っても悪臭は取れず、耳ダニもひどい状態だった子がいます。
また、1年以内に親犬が受けた狂犬病ワクチン、混合ワクチンの証明書を見せてもらいましょう。
母犬がワクチン接種を行っていない場合、子犬に免疫がいこうしないのでより感染症に注意が必要になります。
ワクチンは打っているけれども証明書を紛失した。などという場合もありますが、管理がしっかりしていないという証拠ですし、もしかしたらワクチン接種を行っていない場合もあります。
4子犬にどんな躾をしているか
生後4ヶ月までは子犬の精神面や身体面の成長にとって、とても大切で、母犬や兄弟犬達と社会性を学ぶ時期でもあります。
この時期に躾や社会性を身につけていなければ、自宅に迎えてからの躾に大きく影響します。
子犬に対してどのような関わり方をしているのかを知ることで、子犬を大切にしているショップやブリーダーなのか、ただ売ればいい、子犬を商品としか見ていないショップやブリーダーかが分かります。
離乳食が始まったばかりの子犬を販売しているペットショップがありますが、論外ということが分かるでしょう。
5引渡し後のフォローアップ体制
初めて子犬を飼う方にとって、躾だけではなく、子犬が体調不良になったらどうしたらよいのかと、迷ったり悩んだりすることばかりになるのではないでしょうか。
そのような場合、事前にどのようなフォローをしてくれるのか、確認しておきましょう。
これら5項目のことを皆がチェックするだけで、ペットショップやブリーダーがこれらをやらざるを得なくなります。
こうした行動が、子犬の販売者の改善につながっていくことにもなるのです。
ドッグスクールへの相談内容
犬を飼っているご家庭では、大なり小なり問題点を感じていることと思います。
そこで、ドッグスクールに寄せられる相談内容を紹介しましょう。
ご家庭に迎えた時の月齢が生後2ヶ月で67%となっており、その中でも小型犬が73%と圧倒的に多いのが分かります。
一番多いのはトイレの相談
多い相談は、トイレを覚えない、トイレの失敗に関する相談です。
犬の場合、トイレに関しては生後9ヶ月で確立されてしまうと言われていて、家庭に迎える前、ペットショップやブリーダーの元でしっかりとトイレトレーニングされていたかどうかがキーポイントです。
家庭に迎えてからトレーニングして矯正することも可能ですが、かなりの期間と根気が必要です。
ペットショップやブリーダーのホームページで子犬を紹介している場合、「失敗もありますがトイレシートでおしっこできています」「新聞紙におしっこするのを覚えています」などの記載がある場合があります。
こうした販売者のもとでは、子犬がトイレの躾をしてもらっているということで、家庭に迎えてからのトイレの躾も比較的やりやすくなります。
その他の相談内容
トイレの失敗以外の相談内容としては、「甘噛み」「飼い主を噛む」「指示を無視する」「威嚇する」という問題行動が挙げられます。
子犬の頃はさほど問題にならなくても、成長と共に大きな事故につながる可能性があるので、早い段階で改善していかなければいけません。
子犬はとても可愛らしく、甘やかしてしまって躾が二の次になってしまったり、何が問題行動なのか分からないまま過ごしてしまい、目に見える「噛む」「吠える」などの問題行動が現れてから困ってしまい、途方に暮れるということがよく見受けられます。
スクールに相談にきたときの子犬の月齢で一番多いのが生後3ヶ月です。
これは生後2ヶ月で子犬を迎え、1ヶ月ほど自分達で躾をしてみたけれどもうまくいかず、スクールに相談にくるというパターンが多いからに他なりません。
実際にドッグスクールでトレーニング
ペットショップから迎えた柴犬の子。生後4ヶ月で迎え入れ、ドッグスクールへは生後5ヶ月で訪れました。
相談内容
家に迎えた直後から攻撃的・特に手を噛む・散歩ができない
散歩ができないという内容は、リードを持つ人が立ち止まり、自分の体重が首にかかっただけでギャンギャンと鳴くので、リードをつけて歩くことができない状態でした。
また、頭や顔の付近をなでる時、口の中をチェックしようとするだけで、激しくギャンギャンと鳴く状態です。
ドッグスクールで3ヶ月トレーニング
ドッグスクールに3ヶ月預けてトレーニングした結果、リードを持つ人の言うことをきき、リードを引っ張ることもなくきちんと横について歩くことができ、「待て」「座れ」などの言うこともちゃんときけるようになりました。
頭や顔の周りに触れても鳴かなくなり、トレーニングを終えて家に帰ってからは、家族の人に歯磨きをさせてくれるまでになりました。
飼い主がするべき5つのこと
せっかく迎える子犬が飼いにくいわんちゃんにならないよう、家族皆が心がけなければいけないことが5つあります。
1犬の生態を知る
「犬を飼いたい!」という思いだけなら犬を飼うべきではありません。
犬とはどんな動物なのか、生態を学ぶ必要があります。
家族として迎え入れた子犬は、ヌイグルミでもファッションの一部でもありません。
犬という動物を知らなければ、間違った飼い方につながってしまいます。
また、犬種によっても性格や特徴なども違いますので、どんな犬種が自分達の生活スタイルに合っているのか知る必要があります。
2母犬の代わりになる
子犬は母犬から躾をされます。小さな頃から母犬や兄弟犬から離された子犬には、飼い主が母犬代わりとなって躾をしてあげる必要があります。
可愛さのあまり、甘やかし放題では人間のためにも子犬のためにもなりません。それは愛情とは言えないのです。
子犬がいけないことをした時は、母犬はしっかりと叱ります。
そうすることで、上下関係も必然的にできてくるのです。
3毎日の健康チェック
動物は言葉を話すことができません。具合が悪かったり、どこか痛いところがあっても訴えることができないのです。
そのため、変わった様子がないか、いつも通りフードを食べているかなど、毎日犬の健康状態をチェックする必要があります。
毎日チェックすることで、様子がおかしいときは気づいてあげることができます。
愛犬の健康を守るのは飼い主しかいません。
4子犬のことをよく知る
子犬を家族として迎えたら、その子がどんな子なのか把握しましょう。
躾やトレーニングの基本となるのは、その子のことをよく知ることから始まります。
活発なのか、おっとりしているのか、個々によって違います。
そして、子犬がとる何気ない行動にも、必ず理由があることを知りましょう。
5人間社会で生きるルールを教える
人に飼われるということは、人間界のルールを覚えさせる必要があります。
子犬の頃は「可愛い」で済まされることも、成長するとご近所とのトラブルに発展することも少なくありません。
子犬の頃から、「やってはいけないこと」「やっても良いこと」をしっかりと教える必要があります。
スリッパや靴を噛んでいる姿が可愛いからとやりたい放題にさせていると、成長してからスリッパや靴はおもちゃだと認識していますので、破壊魔になってしまいます。
躾=難しいというイメージがあるかもしれませんが、人と犬が快適に暮らすためのルールを教えることが、犬にとっての躾なのではないでしょうか。
躾の始まりは子犬を迎えたその日から
犬への躾は、家庭に子犬を迎え入れたその日からが始まりです。
問題が起こってからではなく、起こる前の予防策として躾は必要です。
困った時、迷った時はそのままにせず、ドッグトレーナーなどのプロに任せるのが一番早い解決方法です。